司法書士を職種で見た場合、どのくらいの収入を得られるのでしょうか。司法書士はその資格試験の難しさや、士業というエリートイメージから、高年収を稼ぐ職種と思っている人も多いと思いますが、実際はどうなのでしょう?
結論としては「本人次第」です。
その理由は「司法書士の働き方」に関する記事で紹介したとおり、給料制で雇われる勤め人としての司法書士と、自分で司法書士事務所を開いて手広く業務を行う司法書士とを単純比較することは出来ないからです。
しかし、開業・独立がしやすいことも司法書士の魅力。司法書士には、1000万プレイヤーへの扉がいつも開かれているのです。このことを念頭に、本記事では司法書士の働き方による年収の違いや相場、高年収を得るために必要なことについて解説してみます。
雇われ vs 独立開業、それぞれの年収相場
雇われ司法書士の場合・・・意外とキビしく
勤務する事務所の規模や、都市圏とそれ以外の差はあるとは言え、初任給で20~30万円位が相場となっております。難関試験を突破した割には、厳しい金額ですね。となれば、ボーナスの有無にもよりますが、年収ベースでは、だいたい240〜360万円といったところでしょうか。
司法書士の資格試験に年齢制限はありませんが、そのかわりに試験合格者は等しく“新人”として扱われます。雇う方からしたら何歳であっても“見習い”です。
かたや雇われる司法書士にとっても、事務所は自分のスキルアップと実務経験を積むための修行の場とみています。数年単位で事務所を転々とし、自分の経験値を上げて行くという人も少なくありません。
そう言う意味では、先輩司法書士から仕事のイロハを学びながら貰う給料としては、一概に低い金額と言い切れません。
雇われ司法書士のメリット
- 求人情報には困らない
- 様々な経験を積める
- 経費の心配がない
- 自分の時間が持てる
- トラブルは所長が被ってくれる
独立司法書士の場合・・・そこに夢はあるのか?
一方、独立司法書士の場合はどの位の収入があるのでしょうか。
司法書士会連合会が実施した「平成23年度司法書士全国調査」によれば、
司法書士事務所の年間売上げの平均は
1,796.4万円 ※回答数は1,755件
また、「平成24年経済センサス‐活動調査」では1事業所あたりの売上げが
2,127万円
数字としては、なかなかの高額です。ただ、数字は諸経費を差し引く前の事務所としての売上げであることを忘れてはいけません。
つまり、この金額から事務所家賃・スタッフの給料・交通費などを引いたものが独立司法書士の収入となります。あくまで平均値なので、スタッフを多く雇い事業を拡大させている事務所の売上げはもっと大きく、それに比例して所長の年収も高いはずです。
また、「奥さんを事務員にして自宅で開業」というような個人事務所であれば、その逆もあるわけです。いずれにせよ、独立司法書士の年収を決めるのはその人の考え方次第と言えるでしょう。
独立司法書士のメリット
- 働き次第で高収入が得られる
- 自分の思うようにやれる
- 必要経費が認められる
- 幅広い人脈を構築できる
- やりがいがある
司法書士で年収1000万プレイヤーになるための対策
独立司法書士は、働き次第で高収入が得られるというのは事実ですが、そもそも仕事がなければ話になりません。登記業務を中心に報酬を得る司法書士の現場は、多くの案件をこなしてナンボの世界なのです。
安定的に仕事を受注するためには、本人のやる気はもちろん、マーケティング戦略も重要です。司法書士は独立開業しやすい資格ではありますが、何もせずにやって行けるほど世の中は甘くありません。
では、どのように仕事を受注するのか。また、そのために何をすればよいのか。
ここでは基本的なポイントを3つ紹介します。
⓵複数企業からの紹介ルートを確保
土地や建物の登記は司法書士だけの独占業務です。
例えば
・一戸建住宅を買ったとき
・マンションを買ったとき
・新しく家を建てたとき
このような時には必ず司法書士による登記が発生します。大規模マンションラッシュが続くと司法書士の先生たちは儲かってしかたがないですね。
しかし経験がある人は分かると思いますが、マイホーム購入時に自ら司法書士事務所を探して登記業務を依頼した人って稀なんじゃないでしょうか?思い返せば、自分が新築マンションを買った時も、登記や銀行決済は販売会社にお任せでしたし、司法書士さんとやり取りした記憶もありません。
その理由は、不動産会社や住宅メーカーが自社お抱えの司法書士を指定することが多いからです(原則、不動産売買の際は買主が司法書士を指定する)。
という訳で、案件のボリュームが見込める住宅・不動産関係の企業や銀行との取引は特に重要です。企業訪問や異業種交流会などを通じて、多くの企業との提携を目指しましょう。
⓶インターネットによる集客は鉄板
今は、大抵の情報がインターネット検索で入手できる時代です。
「司法書士に依頼したいけど、どこに頼めばいいか分からない」という個人客は、まずインターネットで地域の司法書士事務所を検索するに違いありません。
あるいは、住宅・不動産関係の企業や銀行の担当者が「もっと若くてバイタリティのある司法書士が必要だ」としてネットで探すことは多いに考えられることです。前述した「企業からの紹介ルート」以外では、ネットルートによる集客は欠かせません。
- 親から土地を相続する人
- 子に土地を譲りたい人
- 初めて会社をつくる人
- 借金トラブルのある人
- 遺産相続のある人
ざっと例をあげてみました。ここにあげた顧客以外にも個人が司法書士を必要とするケースは色々あります。ネット検索で取りこぼすことのないようなサイトを作ると良いでしょう。
対策内容 | 理由 |
司法書士への相談が必要となるようなケーススタディをホームページ上に記載する。 | 検索されやすいキーワードを含むことで、検索にヒットしやすくなる。また、ケーススタディを提示することで、その道の専門性や実務経験をアピールできる。 |
リスティング広告などを利用して、検索結果+広告表示で目に触れやすい対策をとる。 | 通常の検索では上位表示されない点をリスティング広告で補い、安定した訪問者数を図る。 |
※リスティング広告とは:あるキーワードで検索した時に、その検索結果に連動して表示される広告の事。
⓷他の士業とのパイプづくり
「税理士や行政書士とのパイプが大切」と言われてもピンと来ないかもしれません。
ところが、他の士業の先生とのお付き合いは非常に重要です。というのも、それぞれの士業に舞い込む仕事には、関連して他の士業に任せるしかない業務も付随することが多いからです。
例えば、長年勤めた会社を辞めて起業しようとした人が、税務関係を依頼するためにネットで税理士を探して契約することになったとしましょう。その人は税理士に会社設立登記についての相談もします。税理士が「それはウチの専門外ですから」と突っぱねるようなことでは、仕事がスムーズに進みません。そこで会社設立登記については、懇意にしている司法書士に話を繋ぐわけです。
このように司法書士事務所は、他の士業との“持ちつ持たれつ”の関係を築いて仕事をお互いに回しています。他の士業資格も取得して一手に業務を行う「ダブルライセンス」をすすめる記事も見かけますが、何でも一人でこなさなければならないことで「仕事の効率が悪くなって件数をこなせない」となれば本末転倒です。あくまで参考と考えれば良いでしょう。
- 自分の営業ルート以外から仕事が舞い込む
- 複数の士業との連携で業務の間口が広がる
- 得意業務に集中できて、仕事効率が上がる
1000万プレイヤー対策のまとめ
以上、司法書士で年収1000万円プレイヤーになるため対策を3つ紹介しました。
司法書士業務に対する報酬はそれぞれの事務所が決めることなので、多少の差があるとは言え相場と言うものがあります。極端に高い報酬を設定すれば顧客も離れるでしょう。
となると、多くの収入を得るためには仕事の件数を増やすしかありません。登記業務を中心に報酬を得る司法書士の現場は、多くの案件をこなしてナンボの世界、と前述しました。
ここで紹介した3つのポイントは仕事受注のための基本的なものです。単発仕事の受注だけでなく企業と顧問契約結ぶ司法書士事務所もありますので、それぞれのビジネスセンスで独自のスタイルを確立してください。