司法書士試験の受験を目指す方であれば、一度は司法書士試験の合格率について調べたことがあるかと思いますが、受験制限がない国家資格試験の中ではおそらくNo.1、もしくはそれ相当の合格率の低さとなってます。
こんな数字を見てしまうと、受験前から勉強モチベーションが下がってしまうかもしれませんが、本記事では合格率が相当低い事実を踏まえた上で、なぜ合格率が低いのか?について5つのポイントで解説していきたいと思います。
まぁ、合格率が低いのにはそれなりの理由があるってことを踏まえて、これからの試験対策の弾みをつける足がかりにしていただけると幸いです。
Contents
過去のデータを振り返りつつ合格率をチェック
まずは、どれほどの合格率なのかを確認するべく過去10年分の試験結果情報を一覧&グラフにまとめてみました。
なお、データについては法務省の司法書士試験のアーカイブページからの引用となります。
司法書士試験の合格率一覧(過去10年分)
年度 | 出願者 (人) | 受験者 (人) | 合格者 (人) | 合格率 |
2007年 (平成19年) | 32,469 | 26,860 | 919 | 3.42% |
2008年 (平成20年) | 33,007 | 27,102 | 931 | 3.44% |
2009年 (平成21年) | 32,558 | 26,774 | 921 | 3.44% |
2010年 (平成22年) | 33,166 | 26,958 | 948 | 3.52% |
2011年 (平成23年) | 31,228 | 25,696 | 879 | 3.42% |
2012年 (平成24年) | 29,379 | 24,048 | 838 | 3.48% |
2013年 (平成25年) | 27,400 | 22,494 | 796 | 3.54% |
2014年 (平成26年) | 24,538 | 20,130 | 759 | 3.77% |
2015年 (平成27年) | 21,754 | 17,920 | 707 | 3.95% |
2016年 (平成28年) | 20,360 | 16,725 | 660 | 3.95% |
司法書士試験の合格率推移グラフ(過去10年分)
まぁ、ごらんの通り、司法書士試験の合格率についてはここ10年間では、3.42~3.95%の合格率で推移しており、安定の低さといったとこですね。
国家試験の場合、結構年度によって合格率が上下することが多いと思いますが、司法書士試験については絶対評価試験ではなく、相対評価試験を採用しているため合格率がそれほど変わらないと言われてます。
- 絶対評価試験・・・
合格基準点を越えるか超えないかで合否を判断する試験。試験の難易度が高ければ合格率が著しく低くなることもある。 - 相対評価試験・・・
試験実施者の上位◯%を合格とする試験。分かりやすく言えば学校の入学試験が概ね相対評価試験になる。合格率が概ね同水準のため、試験の難易度には左右されない。
にしても、3%台ってのはあまりにも低い合格率ですね。。
あと、このグラフで気になるのが、平成23年あたりから出願者数、受験者数が減少傾向にある点です。この点については司法書士試験に限らず国家試験全般に起こっており、理由については様々ありますが、一番の理由としてはSNSの普及によるものと言われてます。
今まで士業の仕事や日常はどちらかと言えば閉ざされた状態であり、ひと目に触れる機会が少なかったのですが、SNSの普及により士業を営んでいる方々がセルフブランディングの一環として日常をオープンにした結果、その業種が自分に合う合わないの判断が資格を目指す前に出来てしまう世の中になったのが、この受験者数の減少傾向を招いているようです。
まぁ、良く言えばなんとなく資格を取ってみようという受験者が減った分、働き方や将来を見据えて本気で司法書士を目指す受験者の密度が濃くなったという現れとも言えるでしょう。
と、かなり話が脱線してしまいましたが、合格率がメチャクチャ低いということをご理解頂いたところで、次に「なぜ低いのか?」を解説していきたいと思います。
【理由その1】
受験資格は特にないため誰でも受験することが出来る
そうです。司法書士試験には学歴や実務に関する受験制限がないため、誰でも受験することが出来ます。言いかえれば、受験料さえ払えば誰でも受験することが出来るため、冷やかし受験、記念受験の層も少なからずいます。(まぁ、受験制限なしの試験だと大体居ます)
そもそも、試験の出願をして受けてなかった人達(午前試験で帰った人も含む)が毎年2割位いますので、それを考えれば冷やかし受験でも受けに来てるだけエライって言い方も出来ますがwww
で、先程の説明でも書きましたが、本気の受験者層の密度は濃くなっている傾向にあるとは思いますが、それでも一定層はそういった方も居るため、基準とするボーダーを低く設定する必要があると考えられます。
【理由その2】
科目合格制度がなく一発勝負の試験である
超難関資格と言われる資格試験の場合、科目合格制度を導入している試験もありますが、司法書士試験ではその制度がなく試験に不合格だった場合は、翌年以降の受験時では全科目受験する必要があります。
例えば税理士試験では、受験科目数が5科目(必須科目:2、選択科目:3)ありますが、「永久科目合格制度」を導入しているため、極端に言えば1年で1科目ずつ受験して5年後に本試験合格といったことも可能なんですが、司法書士試験にはもちろんそんなものはありません。
ダメなら全部やり直しです。。
この辺りの試験制度のキツさが、不合格だった受験生の再受験のモチベーションを削いで行く要因にもなってます。
なお、司法書士試験には筆記試験合格者が次に受験する口述試験がありますが、こちらは落とすだめの試験ではなく司法書士としての確認をしてもらうための工程の位置付けが強く、基本的には「欠席さえしなければ落ちない」とも言われてます。
ようは筆記試験がクリアできればほぼ司法書士試験に合格したも同然と言えますが、科目合格の持ち越しが出来ない筆記試験が鬼門であり、合格率を低くしている要因の一つにも挙げられます。
【理由その3】
学習範囲がとてつもなく広範囲
先程の科目合格制度がない話の流れとなりますが、司法書士試験の筆記試験は一発合格試験であるにも関わらず、その科目数は全11科目とかなり広い学習範囲となります。
民法/不動産登記法/会社法・商法/商業登記法/民事訴訟法/民事保全法/民事執行法/供託法/司法書士法/憲法/刑法
一つの科目に時間を割いていると、試験までに全範囲を網羅することが出来なかったりしますので、計画的にかつまんべんなく学習する力が問われます。
ただし、全11科目すべてがまんべんなく試験に出題されるかと言えば少々違っており、出題問題数に関しては科目ごとに偏りがあるため、学習を濃くする科目、薄くてもよい科目をある程度分別して学習するのが試験合格への近道とも言えます。
出題形式 | 科目と出題数 | 出題数計 |
択一式(午前) | 憲法(3問)、民法(20問)、刑法(3問)、会社法・商法(9問) | 35問 |
択一式(午後) | 民事訴訟法(5問)、民事執行法(1問)、民事保全法(1問)、司法書士法(1問)、供託法(3問)、不動産登記法(16問)、商業登記法(8問) | 35問 |
記述式(午後) | 不動産登記法(1問)、商業登記法(1問) | 2問 |
特に「民法」「不動産登記法」「会社法・商法」「商業登記法」の4科目については、試験の出題数がかなり多く、これらをまとめて司法書士試験の主要4科目と言われており、いわば絶対に時間をかけて勉強しないといけない科目と言えるでしょう。
【理由その4】
3つのテストバリエーションをこなす能力が問われる(特に記述式)
先程の科目解説のところでも少し触れましたが、司法書士試験の試験方式については大きく3つの方式があります。
択一式 |
五肢選択のマークシートで出題され、「正しいもの(誤っているもの)はどれか?」の形式で出題されます。国家試験でよくあるオーソドックスな形式。 |
記述式 |
不動産や会社の登記記録と権利変動を生じさせる事実関係が示されており、それを読み取ったうえで、どういう登記申請が必要かを擬似の申請を答案用紙に記載させる問題形式。択一式のように正しいか誤っているかを判断するのとは異なり、記述式は一から判断していく必要がある。 |
口述試験 |
筆記試験で出題される科目(主に不動産登記法、商業登記法、司法書士法の基礎知識)について、試験管の問に対して受験生が回答する形式。基本的に不合格になることはほとんどない試験だが、質疑応答の対策は必要。 |
択一式については、試験でよるある形式であるため、特に抵抗に感じる方は少ない(といっても科目数はかなり多いですが)と思いますし、口述試験についても、筆記試験が終わってから対策を行えば十分対応出来る(といっても口述試験対策は必須)と思いますが、司法書士試験の記述式については、実際の登記申請を作成するという試験となるため、記述式に特化した試験対策が必要となります。
また、記述式の問題については、不動産登記法、商業登記法でそれぞれ一問ずつ出題され、問われる内容、記述形式が異なるため、それぞれの記述式対策が必要となります。
択一式であれば、最悪五分の一で当たりを引くことは出来るかもしれませんが、記述式については運の要素ゼロの完全実力試験となるので、合格に向けたハードルがグンの上がる要因となってます。
【理由その5】
試験方式ごとで合格基準点があり苦手科目があれば即致命傷
では、最後の理由についてですが、実はコレが最も司法書士試験の合格率を下げている要因と個人的には考えております。
というのも、司法書士試験の筆記試験では択一式(午前)、択一式(午後)、記述式(午後)のそれぞれに対して合格基準点が設けられており、その合格基準点をクリアし、かつ合計得点にも基準点が設けられているという、いわば合格基準点4段フィルターで受験生をふるいにかけます。
以下は過去5年分の基準点となりますが、年度、試験方式それぞれでかなり高い合格基準点が設けられてます。
年度 | 基準点 | 合格点 | ||
択一(午前) (105点満点) | 択一(午後) (105点満点) | 記述(午後) (105点満点) | ||
2012年 (平成24年) | 84点 (80%) | 78点 (74%) | 38.0点 (63%) | 215.0点 (77%) |
2013年 (平成25年) | 84点 (80%) | 81点 (77%) | 39.0点 (65%) | 221.5点 (79%) |
2014年 (平成26年) | 78点 (74%) | 72点 (69%) | 37.5点 (63%) | 207.0点 (74%) |
2015年 (平成27年) | 90点 (86%) | 72点 (69%) | 36.5点 (61%) | 218.0点 (78%) |
2016年 (平成28年) | 75点 (71%) | 72点 (69%) | 30.5点 (51%) | 200.5点 (72%) |
記事冒頭でも触れましたが、司法書士試験は相対評価試験であるため合格率についてはそこまで上下しませんが、代わりに合格基準点は毎年かなりの幅で動きます。
また、基準点のボーダーも択一式で年度によっては9割近い得点が必要になりますので、かなり過酷な試験といってもよいでしょう。
この試験方式毎の合格基準点方式のおかげで、苦手な科目、試験があればそれは即致命傷となるため、受験生にはすべての試験方式、科目でまんべんなく得点出来る能力が必要になってきます。
“ほんとに誰が考えたんだよ、この方法!!!”
という感想です。
まとめ&合格率を乗り越えるポイント
とまぁ、様々な切り口で司法書士試験の合格率の低さの理由について解説してまいりましたが、低い低いといっても試験は試験、決められた合格基準点をクリアさえ出来れば合格を勝ち取ることが出来るので、まずはそこを目指して試験対策を続けるしかありません。
苦手科目を作らず、計画的かつ継続的に知識のインプットとアウトプットを行っていけば、遠かったゴールも身近に感じることが出来ますので、受験生の皆さんは合格率はあまり気にせずやれることをキッチリやって準備していきましょう!
最後に本記事のポイントから試験対策5箇条を挙げておきます^^
- 苦手科目を作らない!(これは鉄板!)
- 学習は計画的かつ継続的に!(1日のサボりが3日の遅れ!)
- 複数の試験方式になれること!(特に記述式!)
- 回りはみんな記念受験だと思え!(ぐらいの気持ちが大事!)
- 合格率は気にするな!(と思わないとやってられない!)