みなさんも「士業(しぎょう)」という言葉を耳にしたことがあると思います。◯◯士と言うように、最後に“士”が付くので「さむらいぎょう」などとも呼ばれる人たちのことですね。国家試験の難関を勝ち抜いた彼らに抱くイメージは、群れに属さず一匹狼として職を全うする、まさに武士そのものです。
特に、数ある士業のなかでも、戸籍・住民票の請求権が認められている「弁護士」「司法書士」「行政書士」「土地家屋調査士」「弁理士」「公認会計士」「税理士」「社会保険労務士」は“8士業”と総称されています。
では、そのひとつ「司法書士」とはどのような資格を持つ人なのでしょう?
司法書士に関心がある人はもちろん、これから司法書士を目指す人にも参考になるように、分かりやすく解説してみましたので、ぜひ参考にしてください。
司法書士の仕事とはどのようなもの?
【司法書士】
他人の嘱託を受け、簡易裁判所における民事訴訟手続、登記・供託に関する手続などについて代理し、また裁判所・検察庁・法務局・地方法務局に提出する書類の作成を業とする者。
※広辞苑より
つまり、司法書士とは裁判所などに提出する書類を作成したり、不動産の売買や会社設立などに関して必要な登記を行うことの出来る国家資格を持つ専門家なのですね。
具体的に、司法書士がいつどのような時にどのような仕事をしているのかを順に見て行くことにしましょう。
土地や建物、いわゆる不動産に関する様々な権利の登記に必要な書類作成と手続きを行います。
- 一戸建住宅を買ったとき
- マンションを買ったとき
- 新しく家を建てたとき
- 親から土地を相続するとき
- 子に土地を譲りたいとき
会社を設立するときに必要な書類作成や登記、また登記事項を変更する際に必要な手続きを行います。
- 新しく会社を作るとき
- 商号、目的、本店などを変更するとき
- 取締役など役員を変更するとき
- 資本金を増やしたり、減らすとき
- 有限会社から株式会社に変更するとき
- 会社を解散するとき
裁判所に提出する訴状・申立書や検察庁に提出する告訴状などの書類を作成ほか、供託(※1)の手続きを行います。また「認定司法書士」は、簡易裁判所で扱われる訴訟(請求額140万円以下)で依頼人の代理となり裁判上の手続きを行います。
- 貸したお金を返してもらえないとき
- 借りたお金を返せなくなったとき
- 家主とトラブルになり、家賃を受け取ってもらえないとき
- 会社が残業代を払ってくれないとき
- 夫または妻と離婚したいとき
- 訪問販売の契約を解除したいとき
裁判所に提出する訴状・申立書や検察庁に提出する告訴状などの書類を作成ほか、供託(※1)の手続きを行います。また「認定司法書士」は、簡易裁判所で扱われる訴訟(請求額140万円以下)で依頼人の代理となり裁判上の手続きを行います。
- 親が認知症でお金の管理ができないとき
- ひとり暮らしで老後が不安なとき
- 遺産相続で揉めたくないとき
- 財産管理を信用できる人に任せたいとき
(※1)供託とは
お金を支払わなければならないのに「相手がお金を受け取らない」「誰に支払うのかわからない」といった状況になったとき、代わりに国の機関に預かってもらうことを「供託」といいます。供託の手続きをすることで「お金を支払いました」というに証明なります。
司法書士の働き方は大きく分けて2通りある
司法書士として仕事をしていく場合、大別すると「雇われ司法書士」と「独立系司法書士」の2つのパターンがあります。
それぞれの特徴としては以下の通りとなります。
①他の司法書士事務所や法律事務所で働く
その中から求人情報などをもとに、自分に合いそうな事務所を選んで雇ってもらうことになります。事務所勤めの司法書士は、いかに資格を持っているとはいえ給料制で雇われる会社員と同じと言えます。
②自分で司法書士事務所を開業する
しかし、そこは競争の世界。司法書士の資格を持っているから安泰とはいきません。特に都心部では多くの司法書士事務所が乱立していて顧客の獲得競争となっています。
そのため、独立指向の司法書士であっても、どこかの司法書士事務所で経験を積んでから、将来進むべき方向を見極めるという人が多いと思います。
とある司法書士の1日を追ってみた
国家資格だけに、お堅いイメージがないとも言えない司法書士と言う仕事。
はたして彼らはどのように日々の仕事をこなしているのか気になるところですね。
で、一例として司法書士事務所に務めるT君のある1日を追ってみたところ以下のようなスケジュールとなってました。
09:00 出勤 今日一日のスケジュールを確認
10:00 法務局にて登記申請
11:30 事務所に戻って書類作成
12:00 昼食
13:00 銀行で不動産取引決済
14:00 事務所で予約客と面談
15:30 取引先の企業を訪問
17:00 事務処理、書類作成
18:00 ミーティング
登記だけを行う事務所と裁判案件を中心の事務所では内容が変りますし、勤め人としての司法書士と独立開業の司法書士では仕事量も違うのです。
また、本人の処理能力や仕事に関するスタンスの差もあるでしょう。
ただし、言えることは司法書士という仕事が「一日中、机で事務作業をしている」ようなお堅いイメージとは違い、思いのほか外出や人と会うことが多い仕事である、ということはお分かりいただけたことでしょう。
司法書士と認定司法書士について
認定司法書士とは、特別な研修を受け法務大臣より認定を受けた司法書士のことです。認定司法書士になると、それまでは弁護士しか出来なかった、裁判所における民事事件(簡易裁判所での、訴訟の目的となる物の価額が140万円を超えない請求事件)の代理業務を行うことができます。
最近では「登記業務」より「簡裁訴訟代理等関係業務」に力を入れる司法書士も増えています。本来弁護士が担当する業務の一部を司法書士が行えるようになったのは、増え続ける様々な訴訟や事件への対応を考えてのことかもしれませんね。過払い金の返還請求や債務処理を扱う司法書士についてはテレビのCMですっかりお馴染みとなりました。
なお、参考までに認定司法書士が行うことが出来る「簡裁訴訟代理等関係業務」の内容をご紹介しておきます。
- 民事訴訟手続き(訴訟の目的となる物の価額が140万円を超えない請求事件)
- 訴え提起前の和解(即決和解)手続き
- 支払督促手続き
- 証拠保全手続き
- 民事保全手続き
- 民事調停手続き
- 少額訴訟債権執行手続き
- 裁判外の和解の各手続きについて代理する業務
- 仲裁手続き
- 筆界特定手続き
司法書士の仕事のまとめ
ざっと司法書士の仕事についてまとめてみましたが、アナタはどのような印象を持たれましたか?
司法書士の仕事と言えば、不動産や会社の登記業務のほか、裁判所への提出書類の作成が主な仕事でした。しかし、そのフィールドも消費者金融の過払い問題や高齢化社会など、社会背景の変化とともに大きく広がって来ているのですね。
複雑に利害が絡み合い変化する現代社会において、司法書士は本来専門とした登記や書類作成の枠に収まらず、私たちの生活における最も身近な法律の専門家として、今後益々活躍が期待される存在と言えるでしょう。